DRIVERS COLUMN

ドライバーズコラム
  • 2021.11.26
  • レース戦略

タイヤの違い、戦略について

 

筆者:JEGT認定ドライバー 大田 夏輝

 

 

グランツーリスモSPORTには様々な種類のタイヤがあります。今回はそのタイヤの種類、またその違いによって生じる戦略の違いについて解説します。

 

今回の記事ではまず大きくタイヤの種類を紹介し、その後に複数種類のタイヤの着用が義務付けられているレースにおけるタイヤ戦略の組み立て方について解説していきます。ではいきましょう!

 

 

タイヤの種類

 

まずタイヤの大まかな種類について紹介します。

 

◆コンフォートタイヤ

コンフォートは快適という意味で、いわゆる乗り心地や燃費に重きを置いたタイヤです。グリップ性能はあまり高いとは言えず、低馬力の市販車レース以外ではあまり用いられません。

 

しかしながら、その低いグリップ性能をいかにうまく使うかでドライバーの腕が試されるため、奥が深いです。

 

コンパウンドは、コンフォート ハード(CH)、コンフォート ミディアム(CM)、コンフォート ソフト(CS)の3種類があります。

 

◆スポーツタイヤ

コンフォートタイヤと比較するとグリップ性能が高いタイヤですが、いわゆるgr.4以上のグレードのマシンに履かせると心許ない性能のタイヤです。こちらも市販車レースで用いられることが多く、私個人の経験則ではN300以上のグレードになるとスポーツタイヤでのレースが多い印象です。

 

コンパウンドは、スポーツ ハード(SH)、スポーツ ミディアム(SM)、スポーツ ソフト(SS)の3種類があります。

 

◆レーシングタイヤ

スポーツタイヤよりもさらにグリップ性能が高く、gr.4以上のグレードのマシンにはほぼこのタイヤを使用の上でレースを行います。

 

一方で、市販車に使用すると、そのグリップ力より車両の剛性が下回り、かえって扱いにくくなってしまう場合もあるので注意が必要です。

 

コンパウンドはレーシング ハード(RH)、レーシング ミディアム(RM)、レーシング ソフト(RS)、レーシング スーパーソフト(RSS)の4種類があります。

 

◆レインタイヤ

上記3種のタイヤとは一線を画し、こちらは雨天のレースで使用されるタイヤです。他のタイヤと比べ、ウェットコンディションにおけるグリップ性能は高いですが、それでもグリップしにくい状況であるため、より丁寧な操作が要求されます。

 

コンパウンドはレーシング インターミディエイト(IM)、レーシング ヘビーウェット(W)の2種類があり、前者は雨量が少ない時に、後者は雨量が多い時に真価を発揮します。

 

通常レースにおいては規定でどれか一種類のタイヤしか使用できないようになっているため、ここの選択で迷う場面はほぼありません。練習する際にはどの種類のタイヤを用いるのか確認の上、タイヤの限界性能を引き出すことを意識していきましょう。

 

 

タイヤ戦略の組み方

次に、ピットインの上、複数種類のコンパウンドの使用が義務付けられているレースにおける、戦略の組み方について解説します。

 

これを解説するにあたり、まずは各コンパウンドの性質の違いを確認しましょう。

 

ハードタイヤはゴムが硬く、グリップ性能は控えめですが、あまり摩耗せずラップタイムの落ち幅が少ないまま走行ができます。一方で、ソフトタイヤはゴムが柔らかいため摩耗が激しく、ラップタイムは落ちやすいですが新品時のグリップ性能は非常に高いです。ミディアムタイヤはその中間の性能を持ちます。

 

これらの性質を加味したうえで、戦略の組み方の手順を解説します。

 

 

レギュレーションで確認する点

走る前にまずはレギュレーションの確認です。確認すべき項目は主に3つ。

 

1.義務付けられているコンパウンドの種類

2.レースの周回数

3.タイヤの消耗倍率

 

まずは使用が義務付けられているコンパウンドの種類を確認します。2種類の場合もありますが、レースによっては3種類のタイヤ使用が義務付けられており、より戦略の幅が広がります。ここでは、ソフトタイヤとミディアムタイヤ両方の使用が義務付けられていると仮定します。

 

次にレースの周回数と、タイヤの消耗倍率。これによってどのタイヤを長く着用するかの目星をつけることができます。

 

具体例を挙げると、レースの周回数が比較的少なくかつタイヤの消耗倍率が低い場合、タイヤが摩耗せずに長い距離を走ることが可能なソフトタイヤで多くのラップを走ることが得策となります。一方で、周回数が多くかつタイヤの消耗倍率が高い場合、ソフトタイヤの優位性を生かせる時間が短いため、硬いタイヤで長く走ることも視野に入れなければなりません。

 

このように、たとえ同じサーキットであったとしても周回数と消耗倍率で戦略は大きく分かれるのです。

 

 

練習時に確認する点

周回数と消耗倍率を確認したらロビーで消耗倍率を設定し、いざ練習です。ここで確認すべき項目は主に3つ。

 

1.各コンパウンドのおおよそのベストタイム

2.周回を重ねるごとのタイムの落ち幅

3.ピットロスタイム

 

まずは各コンパウンドのおおよそのベストタイムを検証します。これによってまずはスタートタイヤの違いで生じる序盤のペースの差を把握しましょう。

 

次に周回を重ねるごとのタイムの落ち幅を調べます。ここで注意したいのは、検証の際には燃料消耗をオフにするのが理想であるという点です。

 

レース中は最初たっぷりあった燃料が徐々に減っていきます。すると、タイヤ消耗が無い場合、燃料が減った分車重が軽くなり周回数を重ねるごとにタイムがあがっていきます。この特徴は特にX2019などの軽量マシンに顕著に表れますが、他の車両でも表れるものです。

 

よって、真に正確な検証を行うのであれば、燃料によるタイム変動の要素を排除して行うことが理想といえます。

 

タイムの落ち幅を調べると、ミディアムタイヤのタイムがソフトタイヤのタイムを上回るラップがどこかで生まれるでしょう。ずばり、その周回数こそがソフトタイヤで走るべき周回数です。

 

例えば20周のレースにおいて、ソフトタイヤのタイムが9周目でミディアムタイヤのタイムを下回る場合は、ソフト9周・ミディアム11周が理論上最も速く走れる戦略と言えます。

 

しかし、では検証通りの周回数で走ればいい順位でゴールできるかと言うと、そう簡単な話ではありません。状況によってはアンダーカットやオーバーカットの決断を強いられることも多々あります。

 

そこで確認したいのがピットロスタイム。例えばアンダーカットをする際、一番のリスクは新品のタイヤを履いてピットアウトしたにも関わらず、そのタイミングで後ろの順位を古いタイヤで走る車両がすぐ前に出てしまうことです。

 

このリスクを軽減するため、タイヤ交換を含めピットに入った際のロスタイムを計測します。例えばロスタイムが15秒であった時はコントロールラインを通過して15秒経った時に画面右上にある全体マップでピットアウトの位置を見ればおおよそのコース復帰位置を把握できます。

 

ただし、実際にピットインするのは次の周回である点、また、ピットアウト時には低速から加速することにより誤差が生じてしまう点、インテルラゴスなどコントロールラインとピットアウト位置が離れていると把握できない点は注意が必要です。

 

また、ピットロスタイムが短い場合にはソフトタイヤを2回使用することも視野に入れる必要があるため、これを把握することは必須と言えます。

 

レースによっては下限タイヤの着用のみが義務付けられており、この場合は下限タイヤでノーピットという戦略も考えなければなりません。練習の中で検証しましょう。

 

 

スタートタイヤの選択

いざレースということで、まずはスタートタイヤを選択しなければなりません。

 

結論から言うと、上位30%以内からのスタートであればソフトタイヤ、それ以下であればミディアムタイヤを選択するのが無難だと思います。

 

その根拠について、まずは先頭付近でスタートする場合について考えます。

 

先頭付近であれば前を走る車両は少なく、いわゆる先行逃げ切りの形を取りやすいです。レースの主導権を握り、序盤で後ろを引き離し、後半はそのマージンを保ちつつチェッカーを目指します。

 

逆にミディアムタイヤを履いた場合は後ろにソフトタイヤを履く車両がいた場合はバトルを仕掛けられやすくなります。バトルを仕掛けられれば、ミディアムタイヤで不利であることに加え、バトルそのものでタイムを失うことは避けられません。

 

しかし、バトルを仕掛けにくいコースにおいてはソフトタイヤの真価を発揮させず、レースの後半で有利となります。いわばハイリスクハイリターンの選択です。使えるコース、使えるレギュレーションを取捨選択しなければ不本意な結果を生みかねません。

 

次に上位以外でスタートする場合を考えます。

 

ここでまず気を付けなければならないのは、ソフトタイヤを選んだ場合、前を走る車両が一台でもミディアムタイヤを履いていた場合、多かれ少なかれそのペースに付き合わされ、ソフトタイヤの真価が発揮できなくなる可能性が高いです。

 

そのため、スタートはミディアムタイヤを履き、後半ソフトタイヤで巻き返しを図るのが無難な選択でしょう。

 

しかし、前を走る車のペースが自分のそれより遅いことがスタート時点で予想される場合はソフトタイヤの優位性をもって一気に抜き去るという手も考えられます。レースペースでは自信があった一方で、グリッド決めの予選で失敗したときなどに選択肢に入れましょう。

 

そしてさらにスタートタイヤを決めるにあたり重要な考えがもう一つあります。それは、他車のスタートタイヤを読むことです。タイヤの選択のみならず、他車がどのような選択をするかを読むことはレース中の判断においても非常に重要となります。

 

孫氏曰く、彼を知り己を知れば百戦危うからず。自分の持つペース、周りのドライバーの持つペースを客観的に判断し、自分が相手の立場であったらどのタイヤを選択するかを判断します。それをもとに、自分の持ちうるペースを最大限生かせる可能性が高いタイヤ選択をしましょう。

 

 

レースにおけるピットインの判断

最後にレースが始まり、いつピットに入ればいいのかという解説をしていきます。

 

前述の通り、理想のピットインのタイミングで入ることがベストな戦略とは限りません。必要に応じてアンダーカット、オーバーカットを考えなければなりませんので、その判断の基準を解説します。今回はスタートタイヤにミディアムタイヤを選んだと仮定します。

 

私がアンダーカットを検討する状況は以下の3つです。

 

1.すぐ前に自分とほぼ同等のペースで走るドライバーがいる場合

2.目標順位に対して現在の順位が大きく下回る場合

3.すぐ後ろに自分とほぼ同等のペースで走るドライバーがいる場合

 

まず1について、これは新品のタイヤを早く履くことによって、古いタイヤを履く前車がピットインするタイミングで前に出るためです。ペースがほぼ同じ相手であればピットアウト後に抜かれるリスクもそこまで高いとは言えないですし、アンダーカットをしかけやすいと言えます。

 

次に2について、これは予選で失敗してかなり不本意な後方グリッドからのスタートしてしまった場合です。こうなっては他のドライバーと同じ戦略をとっても大きな順位アップは見込みにくいので、一か八かで早めにソフトタイヤに替えてあとは耐えるレースという選択も考えるべきでしょう。

 

最後に3について、これは後ろのドライバーが上記の1の作戦を取ってくるだろうと先読みできる場合です。相手がアンダーカットを仕掛けてくるであろうタイミングで入ることで狙いを挫きます。レース中は意識することがあり忙しいですが、こういったところにも思考を働かせることも非常に大切です。

 

一方で、オーバーカットについては古いタイヤを長めに使うことになるので、使いどころが難しいです。私が使うとするならば、前とも後ろとも差が大きく、いわば完全なる独走状態の時です。今の順位を確実に保つため、後半で追いつかれるリスクを回避するための策です。

 

しかし、それならば理想のピットインのタイミングで入ればいいという話にもなりますし、敢えてオーバーカットする必要は無いかもしれません。

 

上記以外にも、周囲で激しいバトルが生じている場合などはそのドライバーのタイヤは消耗が激しいことからピットインのタイミングを逆算するとより勝利を引き寄せやすくなります。

 

 

まとめ

ということで今回はタイヤの種類とタイヤ戦略について解説しました。

 

特にタイヤ戦略については、練習時には地道な検証が大切になる一方で、いざレース本番では全体の流れや他のドライバーの戦略を読んだ上で決断を行うという臨機応変さが求められます。

 

もちろんレースでは様々な不確定要素があり、自分の立てた戦略が裏目に出てしまうことがあります。しかし大切なことは検証や仮説を自分の中で組み立て、レース後に自分の戦略のどこが良かったか、悪かったかを考えてレースを積み重ねることです。

 

その中で色々なレースのパターンを経験すれば、自分の中で引き出しを多く持つことができます。そうすれば、よりレースもゆとりをもって走ることができます。

 

是非、次のレースからこれらのことを念頭に置いて参加してみましょう。

もしかしたら、今まで見えてなかった新たなレースの側面が見えてくるかもしれません!

 

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