RACE REPORT
レースレポートグランツーリスモの大会として国内最高峰を誇るJEGTのトップリーグとは、毎年異なる盛り上がりをみせる企業対抗戦。
JEGT2024シリーズでも、昨年とはフォーマットを変更して11月9日に開幕した。
過去最大の21チームが参加する企業対抗戦の開幕戦の模様を、全セッションたっぷりとお届けしよう。
JEGTは、2022年から企業対抗戦をおこなっている。
企業対抗戦2年目となる2023シリーズでは、初の入れ替え制度を実施。
上位2チームが今シーズンからトップリーグに参戦している。
そして2024シリーズは、さらなる枠組みの変更をおこない、全リーグの参加チーム数は過去最大の42チームにまで達した。
企業対抗戦の概要を、Rd.1のレギュレーションとともにまずは紹介しよう。
企業対抗戦はトップリーグとは切り離された、いわば独立リーグだ。
しかし、今シーズンの参加チームは21チームにも及び、JEGTが開催するリーグ戦のなかでも最大の規模を誇る。
しかも、すべて企業が母体のチームという点を考えると、eモータースポーツに対する一般企業の理解が進んでいるということだろう。
参加チームの多い企業対抗戦は、事前予選も含めて多くのセッションが開催される。
まずは、決勝レースに進むチームを決めるため、2グループにわけておこなわれる事前予選レース。
そして、グリッド順を決定する予選スーパーラップを経て、ようやく決勝レースにたどりつく。
さらに、決勝レースは、社員ドライバーによるヒート1、認定ドライバーによるヒート2の2ヒート制を採用。
事前予選レースの参加資格は認定ドライバー「以外」と限定されているため、全セッションを通じてレベルの偏りなく幅広い層の選手が参加できる仕組みとなっている。
事前予選レースから決勝レースのヒート2まで全選手のバトンをつないでいく必要があるため、参加メンバー全員のチームワークも試されるだろう。
企業対抗戦の開幕の舞台も、トップリーグ、チャレンジリーグと同様に鈴鹿サーキットが選ばれた。
世界屈指のテクニカルコースだけに、ドライバーのレベルに幅のある企業対抗戦はグリッド順から結果が予想しにくい。
下駄を履くまでわからない勝負の行方に、他リーグ以上に注目が集まりそうだ。
使用コース | 鈴鹿サーキット |
ドライバー制限 | (ヒート1)社員ドライバー (ヒート2)JEGT認定ドライバー |
周回数 | (ヒート1)6周 (ヒート2)10周 |
使用タイヤ | (ヒート1)レーシングハード (ヒート2)レーシングソフト/ ミディアム ※両タイヤ使用義務あり |
企業対抗戦は、決勝レースにいたるまで、全5セッションがおこなわれる。(事前予選レースのタイムアタックを含む)
リーグの性質上、トップリーグやチャレンジリーグに比べるとドライバーのレベルに多少の幅はあるが、全セッションの随所で名勝負が繰り広げられた。
決勝レースまで長い道のりとなる、企業対抗戦の全セッションを詳しくレポートしよう。
予選事前レースのスターティンググリッドは、直前におこなわれたタイムアタックで決定された。
2番手スタートの尾田 結都選手(#87 HKS e-MotorSport)が2ラップ目の130Rで、先行する佐藤 優人選手(#33 NTT ComEng eSports)を見事にオーバーテイクし、そのまま逃げ切りトップチェッカー。
2番手は金子 壮太選手(#41 WEINS_GR × AIRBUSTER)、3番手には岡村 康平選手(#787 Mazda E&T e-MOTOR SPORTS同好会 チームA)が入った。
ポールポジションスタートの内田 圭祐選手(#84 TOMEI POWERED)が、盤石の走りをみせる。
一方後続では、予選通過ラインを睨んだ熾烈な順位争いが繰り広げられる展開。
9番手スタートから怒涛の追い上げみせる檀野 興佑選手(#55 AUTOBACS CLUB TEAM)は、5番手を走行中の渡辺 英樹選手(#23 TEAM SATIO SAGA)を見事にオーバーテイクするなどポジションを上げていく。
見かけ上トップだったニノ高橋選手(#200 ニノンeモータースポーツ新潟)は、レース後の裁定でペナルティが課せられ結果は5位。
結果的に、内田選手(#84 TOMEI POWERED)が見事なポールトゥウィン。
2番手には終始安定した走りをみせた松嶋 朗生選手(#135 Yamaha esports Boosters)、3番手は劇的な追い上げで檀野選手(#55 AUTOBACS CLUB TEAM)となった。
予選スーパーラップは、トップ3チームがわずか0.2秒差というギリギリの争い。
先陣を切った福永 龍我選手(#23 TEAM SATIO SAGA)が、いきなり1分57秒570という好タイムをマーク。
3番手アタックの川村 壮人選手(#33 NTT ComEng eSports)は、セクター2でタイムを更新したもののわずか0.017秒及ばず、この時点で2番手。
後続チームによるタイム更新のないまま、迎えた7番手アタックでポジションが入れ替わる。
尾形 莉欧選手(#87 HKS e-MotorSport)が素晴らしい走りを見せ、1分57秒391でトップタイムを更新。
結局、ポールポジションは尾形選手(#87 HKS e-MotorSport)が獲得。
わずか0.179秒差で福永選手(#23 TEAM SATIO SAGA)が2番手、3番手には、川村選手(#33 NTT ComEng eSports)がつけた。
決勝レースヒート1は、3番手以降の熾烈な争いが注目を集めた。
オープニングラップのヘアピン出口で、3番手スタートの川村 壮人選手(#33 NTT ComEng eSports)がスピン。
後続車が混乱するなかで、6番手からスタートした加島 優生選手(#787 Mazda E&T e-MOTOR SPORTS同好会 チームA)が一気に3番手までポジションアップ。
また、9番手から追い上げをみせていた福室 力選手(#55 AUTOBACS CLUB TEAM)は、スプーン出口で川合 克将選手(#135 Yamaha esports Boosters)、彦坂 佳史選手(#41 WEINS_GR × AIRBUSTER)、堀 秀任選手(#25 MIE TOYOPET CLUB TEAM BTF SPIRIT)を相次いで6番手に上昇した。
終盤でも、上位、中段の各グループで接近戦が繰り広げられる最後までもつれたレース。
結局、吉安 悠介選手(#87 HKS e-MotorSport)が終始安定した走りを続けてトップチェッカーを受けた。
続いて石田 誠選手(#23 TEAM SATIO SAGA)、加島選手(#787 Mazda E&T e-MOTOR SPORTS同好会 チームA)が3位フィニッシュ。
なお、1ラップ目のヘアピンで痛恨のスピンを喫した川村選手(#33 NTT ComEng eSports)だが、順位こそ最下位ながらファステストラップを記録し、意地の走りを魅せた。
上位勢も含めて、スタートは全車ミディアムタイヤを選択。
基本的にピット戦略は同じになるなか、順位変動がどうなるのかに注目が集まる。
事前予選から全セッションでトップを守り続けている#87 HKS e-MotorSportのステアリングを握るのは尾形 莉欧選手。
盤石のスタートから、ポジションをキープしてオープニングラップを終える。
大きな順位変動のないまま迎えた4ラップ目、最初に動いたのは岡村 康平選手(#787 Mazda E&T e-MOTOR SPORTS同好会 チームA)と新川 真也選手(#84 TOMEI POWERED)だった。
さらに、5ラップ目には、一部のチームを除いて各車がピットイン。
タイヤの使用順は同じながら、微妙なピットタイミングの違いがレースの行方を左右する。
5ラップ目にピットインを終えた尾形選手(#87 HKS e-MotorSport)は、岡村選手(#787 Mazda E&T e-MOTOR SPORTS同好会 チームA)の後ろでコース復帰。
岡村選手の、アンダーカット戦略が奏功した形だ。
レース終盤では尾形選手が猛追をみせて1秒以内にまで迫るものの、逃げる岡村選手に1歩及ばず。
結局、ピットタイミングで見事な逆転劇をみせた岡村選手(#787 Mazda E&T e-MOTOR SPORTS同好会 チームA)が優勝。
2番手には尾形選手(#87 HKS e-MotorSport)、3番手は伊藤 龍志選手(#23 TEAM SATIO SAGA)という結果になった。
優勝を決めた#787 Mazda E&T e-MOTOR SPORTS同好会 チームAは、事前予選レースは通過ラインギリギリの5番手フィニッシュ(上位チームのペナルティにより結果は4位)、予選スーパーラップは6位、決勝レースヒート1は3位とセッションを重ねるごとにポジションを上げていった。
そして、決勝レースヒート2の見事なピット戦略で優勝。
レース後のインタビューで岡村 康平選手が語った「バトンをつないでもらったので」という言葉が、チームワークの良さを物語っている。
また、リアルレースへの出場経験もある岡村選手が「足が震えた」と緊張していたことを明かしたが、チームの想いを理解しているからこその重圧だったのだろう。
企業対抗戦でも当然チャンピオンシップを争っているが、トップリーグのように優勝賞金があるわけでも、チャレンジリーグのように昇格といった具体的な目標があるわけでもない。
しかし、企業と仲間を背負っているプライドから、参加選手は上位を目指す。
参加チームの数だけでなく、想いの熱さも上位リーグ以上のものを感じた。
チャンピオンシップの行方が決定する企業対抗戦Rd.2は、2024年11月23日(土)に開催される。
JEGT公式YouTubeチャンネルで生中継されるため、ぜひ全セッション見逃すことなく選手たちの想いを感じ取ってほしい。
Text: 渡邉 篤
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