RACE REPORT
レースレポートJEGT2025シリーズのチャレンジリーグが、2025年9月6日(土)に開幕した。
グランプリシリーズを目指す全15チームが、入れ替え戦への出場権をかけて全3戦を戦う。
シリーズ戦のため今回のRd.1のみで結果が決まるわけではないものの、次戦以降へのはずみをつけるという意味で開幕戦は重要な1戦のはずだ。
参加チーム数が15チームに増えたチャレンジリーグの開幕戦の模様を、全セッション余すことなく紹介しよう。
チャレンジリーグに参戦するチームは、「グランプリシリーズへの昇格」という明確な目標を持っている。
わずか3戦で雌雄が決するため、1戦にかける想いは並々ならぬものがあるはずだ。
まずは、チャレンジリーグの概要とRd.1のレギュレーションをみていこう。
JEGTのチャレンジリーグは、トップカテゴリであるグランプリシリーズへの出場を目指すリーグだ。
チャレンジリーグのシリーズポイントランキング上位3チームが、グランプリシリーズへの出場をかけて戦う入れ替え戦に出場できる。
2025シリーズのチャレンジリーグには新たに5チームが加わり、合計15チームがグランプリシリーズ出場を目指して戦う。
入れ替え戦への出場権が上位「2チーム」だった昨シーズンに比べると門戸は広がったようにみえるが、参加チーム数が増加しているため確率的には変わらない。
さらに、15チームでポイントの奪い合いになることと、出走台数の増加によるレーシングアクシデントのリスクも高まるため、昨シーズン以上に厳しい戦いになることは間違いないだろう。
チャレンジリーグの開幕戦の舞台として選ばれたのは、イタリアの名門コース「モンツァ・サーキット」。
4つの高速区間を3つのシケインでつないだ、世界でも屈指の高速サーキットだ。
今回のRd.1では、予選、ハイパースプリント、コンソレーションレース、決勝レースの4セッションすべてでモンツァ・サーキットが使用された。
モンツアの勝負どころは、高速区間後のシケイン進入でのブレーキングだろう。
特にコース前半のホームストレートと全開で駆け抜けるピアッソーノは、ライバル車のスリップストリームから容易に並ぶことはできる。
しかし、ストレート上でオーバーテイクをするにはやや距離が足らないため、シケイン進入時のポジショニングとブレーキをどこまで遅らせられるかがポイントだ。
1つでも上の順位で多くのポイントを獲得したいだけに、ポジションを問わず手に汗握るバトルが期待される。
使用コース | モンツァ・サーキット |
使用タイヤ | レーシングハード |
スリップストリーム | 弱い |
タイヤ摩耗 | 45倍 |
燃料消費 | 1倍 |
使用コース | モンツァ・サーキット |
周回数 | 5周 |
使用タイヤ | レーシングハード/ミディアム/ソフト ※ソフトのみ使用義務あり |
スリップストリーム | リアル |
タイヤ摩耗 | 7倍 |
燃料消費 | 1倍 |
使用コース | モンツァ・サーキット |
周回数 | 11周 |
使用タイヤ | レーシングハード/ミディアム/ソフト ※ソフトのみ使用義務あり |
スリップストリーム | リアル |
タイヤ摩耗 | 4倍 |
燃料消費 | 1倍 |
ファイナルラップでトップに立った#72 Connect to the Future
予選、ハイパースプリントの結果をみると、どのチームが勝ってもおかしくないほど、各チームの実力が拮抗していることがわかる。
決勝レースだけをみると粘り強く走り抜いた#72 Connect to the Futureの健闘が光るが、実は予選、ハイパースプリントともにポイントを取りこぼしており、シリーズの行方は全くわからない。
手に汗握る展開となったすべてのセッションを、改めて振り返ってみよう。
予選スーパーラップは上位5チームがわずか0.3秒以内、上位10チームでみても1秒以内という、開幕戦からチャレンジリーグの熾烈さを感じさせる結果となった。
ポールポジションを獲得したのは、昨年から参戦する#465 465Garageの石野 弘貴選手。
弱冠15歳とは思えない走りで、1分47秒623というトップタイムを叩き出した。
2番手は橋間 隼選手(#101 REIGNITE)が続き、3番手は#77 DRPPの鎌田 智暉選手。
拮抗していた上位5チームをみると、新規参入チームが3チーム、昨年参戦チームが2チームという結果だった。
下位も新旧入り乱れた順位となっており、昨年以上の混戦が予想される。
JEGT独自のフォーマット、ハイパースプリントがチャレンジリーグでも行われた。
予選スーパーラップ2~15位のチームの上位側と下位側のマッチアップし、勝者に5ポイントが付与される。
一方、予選スーパーラップ1位のチームは出走が免除され、自動的に5ポイントが与えられた。
松山 雄大選手(#777 ZIMA RACERS)
vs
菊地 晃輔選手(#802 遠州ハママツモータース)
スタート直後から、2台が激しいバトルを展開するハイパースプリントらしいレースとなった。
まず仕掛けたのは、後方スタートの菊地選手(#802 遠州ハママツモータース)。
最初のシケインのブレーキング勝負を制し、トップに立った。
しかし、ファイナルラップの同じシケインで松山選手(#777 ZIMA RACERS)がポジションを奪い返す。
レースはそのまま、最後までポジションを守りきった松山選手が勝利。
鈴木 聖弥選手(#6 ZETA DIVISION)
vs
田中 慎太郎選手(#315 Funlap Sports)
今季からJEGTに新加入したチーム同士の対戦。
しかし、鈴木選手(#6 ZETA DIVISION)は、昨年までグランプリシリーズ(2024年はトップリーグ)でも活躍し、十分な実績をもつ。
しっかりとついていって逆転を狙いたかった田中選手(#315 Funlap Sports)だったが、焦りからかスタート直後のシケインでまさかのスピン。
最後まで安定して走りきった鈴木選手が、#6 ZETA DIVISIONとしての初陣を飾った。
伊藤 颯太選手(#809 Team desiLab. eMS)
vs
阿舎利 謙吾選手(#88 GracesBlaze)
後方スタートの阿舎利選手(#88 GracesBlaze)が、先行する伊藤選手(#809 Team desiLab. eMS)の後ろからチャンスをうかがう展開。
一度は阿舎利選手がトップに立ったものの、伊藤選手が第1シケインのブレーキング勝負で再度トップを奪い返す。
その後も阿舎利選手が再三しかけるも、伊藤選手がなんとか防ぎきって勝利。
鋤柄 諒弥選手(#28 姫璽城 VIRTUÀLE)
vs
中村 颯一朗選手(#195 VERSUS e-motorsports team)
ポールスタートの鋤柄選手(#28 姫璽城 VIRTUÀLE)が安定してポジションを守る、ハイパースプリントでは珍しい展開のレース。
スタート直後のシケインを危なげなく駆け抜けると、その後は中村選手(#195 VERSUS e-motorsports team)に差を詰めさせない走り。
結局、終始ペースを乱さなかった鋤柄選手が、初陣で勝利を掴んだ。
石井 大雅選手(#77 DRPP)
vs
松本 伸選手(#11 KOSHIDO RACING Ⅺ)
スタート直後から松本選手(#11 KOSHIDO RACING Ⅺ)が仕掛けるものの、石井選手(#77 DRPP)の巧みなライン取りによって前に出るには至らない。
なんとかポジションを奪いたい松本選手は、2ラップ目の第2シケインで再度オーバーテイクを試みるがこれも届かず。
さらに、焦る気持ちからか、シケインの立ち上がりで痛恨のスピン。
松本選手の猛烈なアタックを防ぎきり、石井選手が勝利を収めた。
森山 綜太選手(#101 REIGNITE)
vs
水野 陸翔選手(#72 Connect to the Future)
新規参戦チーム同士の対戦となった第6レース。
両車が接近戦を演じるなか、先行する森山選手(#101 REIGNITE)の見事な走りが光った。
後方スタートとなった水野選手(#72 Connect to the Future)は、0.5秒前後の差を維持して森山選手を追う。
しかし、素晴らしいライン取りでシケインをクリアする森山選手に対して、オーバーテイクを仕掛けるまでには至らない。
レースは結局森山選手がポールトゥウィンだったが、水野選手も最後までよく粘った。
池内 比悠選手(#35 NISSAN × TRUST RACING)
vs
塚本 健介選手(#193 広島 TEAM iXA)
昨年グランプリシリーズ(2024年はトップリーグ)から惜しくも降格となってしまった#35 NISSAN × TRUST RACING。
2025年シリーズはチャレンジリーグからの再スタートということで、是が非でもポイントを重ねておきたいところだ。
スタートから池内選手(#35 NISSAN × TRUST RACING)はGT-Rの特性を活かして、快調に走行。
塚本選手(#193 広島 TEAM iXA)はなんとか追いつきたいところだが、なかなかチャンスが訪れない。
2ラップ目の第1シケインで並びかける瞬間はあったものの、最後まで池内選手が譲らずそのままトップチェッカー。
コンソレーションレースは、予選スーパーラップ11~15位のチームで争われた。
上位3チームにはポイントが与えられるため、ポイントランキングを考えると是が非でも上位でフィニッシュしたいところだ。
5周で争われたスプリントレースは、激しい2番手争いが繰り広げられた。
まず、2番手スタートの多和田 真悟選手(#88 GracesBlaze)に中村 和希選手(#193 広島 TEAM iXA)が追いつくと、サイドバイサイドに持ち込む。
半周に渡って並走は続いたものの、第2シケインで仕掛けて中村選手が2番手にポジションアップ。
さらに、最後尾5番手グリッドスタートの佐久間 俊一選手(#11 KOSHIDO RACING Ⅺ)が見事な追い上げで2番手の中村選手に追いつくと、ついにポジションを奪う。
両車の争いは最後まで続き、最終的にはファイナルラップの第2シケインでポジションを奪い返した佐久間選手がコース上2番手でフィニッシュ。
一方、ポールポジションスタートの植木 俊輔選手(#35 NISSAN × TRUST RACING)は、スタートから危なげない走り。
後方で激しいポジション争いが繰り広げられるのを尻目に、トップを快走し続ける。
結局、2番手と9秒以上の差をつけて、植木選手(#35 NISSAN × TRUST RACING)が見事にポールトゥウィンを決めた。
2番手でチェッカー受けた佐久間選手(#11 KOSHIDO RACING Ⅺ)だったが、レース後の裁定で3秒のペナルティが課されて3位。
2位には、最後まで諦めなかった中村選手(#193 広島 TEAM iXA)が入った。
コンソレーションレースに続き、タイヤと燃料のマネジメント能力を試されるレギュレーションが設定された決勝レース。
各チームの出方をうかがってか、全車グリッド順に第1シケインに進入する静かなスタートを迎えた。
ただし、数珠つなぎ状態で、いつどのチームが仕掛けるのか時間の問題といった様相を呈している。
最初に仕掛けたのは、4番手スタートの佐藤 魁翔選手(#809 Team desiLab. eMS)と5番手の宮園 拓真選手(#6 ZETA DIVISION)。
1ラップ目最終コーナーのパラボリカでアウト側から前をうかがい、レースは一気に動き始める。
続くホームストレートで大村 天弓選手(#101 REIGNITE)がトップを走る清水 裕生選手(#465 465Garage)に並ぶと、シケインで見事なオーバーテイクを決めた。
しかし、清水選手は、宮園選手に押し出される形でコースアウト。
複数台が巻き込まれる形で、中段以降の順位が大きく入れ替わる。
レース後の裁定が気になるところだが、この時点ではトップ大村選手、2番手菊池選手、3番手宮園選手という上位勢。
レース中盤の4周目に入ると7番手スタートのDhanesh Wigneswaran選手(#72 Connect to the Future)が追い上げをみせ、2番手にポジションを上げていた宮園選手に迫る。
上位3チームはテールトゥノーズの接近戦のまま、タイヤと燃料マネジメントからかレース中盤から後半は膠着状態。
そして迎えたファイナルラップで、2番手の宮園選手が第1シケインでトップの大村選手に仕掛けるが接触してしまう。
その間隙をついてトップに躍り出たのは、マレーシア人ドライバーのDhanesh選手だった。
レースはこのまま、Dhanesh選手(#72 Connect to the Future)が後続を振り切って初優勝。
見かけ上の2番手には宮園選手が入ったが、レース序盤に清水選手との接触に対する5秒のペナルティが課されて2位は大村選手(#101 REIGNITE)。
3位には、スタートからポジションを落とすも粘りの走りをみせた菊池選手(#71 DRPP)が入った。
予選から大混戦だったチャレンジリーグは、1位#72 Connect to the Future、2位#101 REIGNITEといずれも今年からの新規参入チームが上位を占めた。
さらに、注目の#6 ZETA DIVISIONは、ペナルティによるタイム加算があったにも関わらず4位フィニッシュ。
一方、昨年までの参加チームでは、#71 DRPPが3位、#777 ZIMA RACERSが5位という結果だった。
決勝レースだけをみると新規参入チームが上位に食い込んで来ている形だが、シーズンの行方はRd.1だけではまったく予測できない。
優勝をした#72 Connect to the Futureは、予選、ハイパースプリントともにポイントを取りこぼしている。
一方、予選が振るわなかった#35 NISSAN × TRUST RACINGは、ハイパースプリントとコンソレーションレースでしっかりとポイントを重ねて上位進出を狙う。
また、大型移籍で注目を集める#6 ZETA DIVISIONも、残り2戦で間違いなく巻き返しを図ってくるはずだ。
チャレンジリーグの次戦Rd.2は、2025年10月4日(土)にオンライン形式で予定されている。
全3戦の2戦目というのは、シーズンの行方にも直結しかねない重要なレースだ。
放送予定など詳しい情報は、随時更新される公式Xや本サイトで確認いただきたい。
Text:渡邉 篤
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