RACE REPORT
レースレポートJEGT2025グランプリシリーズは、2025年9月7日(日)にRd.3を開催。
開催初年度から着実に力をつけてきた#12 KOSHIDO RACING Ⅻが悲願の初勝利をあげるなど新旧チームが活躍をみせ、Rd.1、Rd.2とはまた違った様相のレースがみられた。
シーズン後半の展開へも期待の高まる、JEGT2025グランプリシリーズRd.3の模様を詳しくレポートしよう。
JEGT2025シリーズのグランプリシリーズは、全5戦で争われる。
つまり、Rd.3はちょうど折り返し地点の、節目のレースといえるだろう。
Rd.1、Rd.2で結果が振るわなかったチームも、仕切り直してシーズンに臨むには絶好の機会だ。
Rd.3のレギュレーションをまずは紹介しよう。
JEGTグランプリシリーズはすでにRd.1、Rd.2の2戦を終えているが、ポイントランキングでは目下3連覇中の#1 QT DIG∞が今年もトップの座を堅持している。
しかし、グランプリシリーズに参戦する残りの9チームも、実力的に大きな差があるわけではない。
2025シリーズの折り返し地点であるRd.3で、シーズン後半に向けて結果を残しておきたいところだ。
今戦の重要性は全チームが理解していることから、予選、決勝、さらにはハイパースプリントで熱い戦いが予想される。
Rd.3の予選、決勝で使用されるマウント・パノラマ・サーキットは、オーストラリアに実在する市街地を利用したサーキットだ。
コース中盤の高低差が多くテクニカルな山道や後半の長いストレートなど、架空のコースかと思わせるほど独特でユニークなレイアウトになっている。
さらにRd.3では、予選は夜間、決勝も後半で日が落ちる設定で実施。
暗闇のなかでトリッキーな「峠」コースということで、波乱の展開も予測される。
使用コース | 対戦ごとに抽選 |
使用車種 | SF23 |
使用タイヤ | レーシングソフト |
タイヤ摩耗 | 20倍 |
燃料消費 | 1倍 |
ナイトロ(OTS)使用時間 | 40秒 |
使用コース | マウント・パノラマ・サーキット |
周回数 | 19周 |
使用タイヤ | レーシングハード/ミディアム/ソフト ※ミディアムのみ使用義務あり |
タイヤ摩耗 | 2倍 |
燃料消費 | 4倍 |
JEGTグランプリシリーズRd.3は、戦略とテクニックががっちり噛み合った#12 KOSHIDO RACING Ⅻが劇的な勝利を収めて幕を閉じた。
しかし、Rd.3のみどころは、#12 KOSHIDO RACING Ⅻの初優勝だけではない。
まず、予選スーパーラップでは、#523 日産サティオ佐賀が2番手タイムを記録。
さらに、ハイパースプリントでも、不利といわれる後方グリッドスタートのチームが勝利する対戦もみられた。
決勝レースでも、2番手以降の各ポジションで見応えのあるバトルが随所で展開。
また、決勝レースで、各チームがとった戦略の違いにも注目いただきたい。
決勝レースのレギュレーションが発表されたのは、スタートのわずか5分前。
5分という短い時間で最適な戦略を立案しつつ、レース中も状況に応じて対応するというチーム全体の力が求められる。
みどころ満載のRd.3全セッションを振り返ってみよう。
予選スーパーラップは、夜のマウント・パノラマ・サーキットで行われた。
注目を集めたのは、1番手アタックで2分01秒092を記録した#523 日産サティオ佐賀の伊奈田 孝高選手だ。
後続チームが次々とアタックをするが、伊奈田選手のタイムには及ばない。
絶対的な速さをもつ佐々木 拓眞選手(#52 KANTOモータースクール SCARZ)が果敢に攻めるも、わずか0.012秒及ばずタイム更新ならず。
しかし、このまま伊奈田選手ポールポジションを獲得すると思われた矢先、最終アタックの佐藤 彰太選手(#1 QT DIG∞)がみせてくれた。
唯一の2分00秒台を記録して、ポールポジションを奪取。
それでも最後までタイム更新を許さなかった伊奈田選手(#523 日産サティオ佐賀)は、2番グリッドを獲得した。
3番手は、佐々木選手(#52 KANTOモータースクール SCARZ)。
予選上位と下位のマッチアップという形で、今ラウンドでもハイパースプリントを実施。
各対戦で使用するコースは、レース直前に鈴木 学氏が抽選する形で決定した。
なお、勝者には5ポイントが与えられる。
奥本 博志選手(#1 QT DIG∞)
vs
深谷 諄選手(#105 SPK e-SPORT Racing with TC CORSE)
素晴らしいスタートダッシュを決めた深谷選手が、1コーナーでイン側からオーバーテイク。
しかし、オーバーテイクスイッチを巧みに操りながら、奥本選手は徐々にその差を詰めていく。
そして、2周目の2コーナー飛び込みで、アウト側から粘って再度トップを奪い返す。
レースはそのまま、奥本選手(#1 QT DIG∞)が逃げ切って勝利。
福永 龍我選手(#523 日産サティオ佐賀)
vs
加藤 達彦選手(#54 MAZDA SPIRIT RACING with TC CORSE)
サイドバイサイドで飛び込んだ1コーナーの争いを制したのは、後方スタートの加藤選手だった。
しかし、福永選手は抜かれたあともピッタリとマークして、再三前をうかがう展開。
勝負を決めたのは、サイドバイサイドで飛び込んだ最終シケインのブレーキング。
イン側を抑えていた福永選手(#523 日産サティオ佐賀)が、再度トップを奪い返して勝利を収めた。
山本 英弥選手(#52 KANTOモータースクール SCARZ)
vs
辻村 亮介選手(#8 ARTA)
実力者同士のバトルとなった第3レースは、オープニングラップから激しい攻防が続いた。
先頭が目まぐるしく入れ替わるレース展開だったが、最後のシケインで追い上げていた山本選手がわずかにミス。
最終的に辻村選手(#8 ARTA)が、混戦を制した。
久万田 崚選手(#12 KOSHIDO RACING Ⅻ)
vs
廣野 大弥選手(#4 EBBRO RACING TEAM)
これまでの激戦とはうってかわって、静かなオープニングラップとなった第4レース。
久万田選手が何事もなく逃げ切るかに思われたが、レース最終盤のスープラコーナー立ち上がりで姿勢を乱してしまう。
この機を逃さなかった廣野選手が、最終コーナーで追いついて勝負の行方はわからなくなる。
しかし、最後は久万田選手(#12 KOSHIDO RACING Ⅻ)がなんとか粘り切って、ポールトゥウィンを決めた。
鵜飼 幸希選手(#9 ウエインズトヨタ神奈川)
vs
西谷 翔真選手(#127 eM福岡 エンタテ!区 LEGENDS)
先行する鵜飼選手を捉える機会をうかがっていた西谷選手は、裏ストレートエンドでトップを奪う。
しかし、2ラップ目の同じ場所で鵜飼選手がオーバーテイク。
そのまま迎えた最終コーナーで、鵜飼選手がわずかにテールスライドをした瞬間を見逃さずイン側から西谷選手が並ぶ。
最後は、両者譲らずサイドバイサイドのままフィニッシュ。
結果は、わずか1,000分の6秒差で西谷選手(#127 eM福岡 エンタテ!区 LEGENDS)が勝利した。
決勝レースは、タイヤ選択が明暗を分ける展開となった。
川上 奏選手(#1 QT DIG∞)、寺島 信一朗選手(#523 日産サティオ佐賀)、國分 諒汰選手(#52 KANTOモータースクール SCARZ)の上位3台と、6番グリッドの堤口 直斗選手(#127 eM福岡 エンタテ!区 LEGENDS)の計4チームがスタート時にソフトタイヤを選択。
レースがスタートすると、マウント・パノラマ・サーキットを得意とする國分選手がすぐに2番手にポジションアップ。
トップを走る川上選手の後ろにつけて、スリップストリームを使いながら燃費を抑えるクレバーな走りをみせる。
一方、ミディアムタイヤを選択し、序盤は苦しい展開になる予想もあった小高 侑己選手(#12 KOSHIDO RACING Ⅻ)だったが、燃費走行をする上位勢にしっかりと喰らいつく。
3ラップ目にソフトタイヤの堤口選手に譲るものの、安定したペースでラップを重ねていく。
ソフトタイヤ勢のピットインタイミングが気になるなか、最初に動いたのはまさかのミディアムタイヤスタートの小高選手。
同じくミディアムタイヤスタートで後方を走っていた、加藤 陸選手(#4 EBBRO RACING TEAM)と佐々木 唯人選手(#54 MAZDA SPIRIT RACING with TC CORSE)も続いた。
各チームが続々とピットインをするなか、上位勢は11ラップ目にようやく動く。
川上選手、國分選手、寺島選手が続けてピットに入り、先にピット作業を終えた小高選手との位置関係に注目が集まる。
小高選手が1コーナーに差し掛かったところで、いち早く國分選手がピットを後にするもののわずかに届かず。
全車ピットインを終えたタイミングで、6番手スタートの小高選手がトップに躍り出る。
レース終盤は陽が落ちて暗闇のレースに様変わりするなか、佐々木選手が燃費走行をする2番手國分選手を猛追。
両車テールトゥノーズのまま迎えたファイナルラップ、最後の直線で2番手争いの雌雄は決した。
佐々木選手がシケイン進入のブレーキング勝負を制して、國分選手をついにオーバーテイク。
レースは、トップ浮上後危なげない走りをみせた小高選手(#12 KOSHIDO RACING Ⅻ)が、そのままトップチェッカーを受けて嬉しいチーム初優勝。
2位は猛追をみせた佐々木選手(#54 MAZDA SPIRIT RACING with TC CORSE)、3位は國分選手(#52 KANTOモータースクール SCARZ)だった。
ポイントランキングだけをみると、#1 QT DIG∞が今年もトップを走っていて4連覇に向けて順調にみえる。
しかし、今シーズンのグランプリシリーズは、見かけのポイントランキング以上に混戦模様だ。
実は、Rd.1から今戦Rd.3まですべて勝利チームが異なる。
開幕戦で昇格後いきなり初勝利を果たした#9 ウエインズトヨタ神奈川、そしてRd.3で悲願の勝利を掴み取った#12 KOSHIDO RACING Ⅻ、Rd.2こそ#1 QT DIG∞が勝利したものの、残り2戦の結果はまるで予想できない状態だ。
さらに、未勝利ながら着実にポイントを積み重ねている#52 KANTOモータースクール SCARZや#54 MAZDA SPIRIT RACING with TC CORSEも、実力のあるチームだけに侮れない。
ディフェンディングチャンピオン#1 QT DIG∞への包囲網が、確実に狭まっていることを感じさせるRd.3だった。
グランプリシリーズの次戦は、少し間が空いて2025年11月30日(日)開催予定。
オフライン大会となるRd.FINALに向けて重要な1戦となるRd.4だけに、各チームがさらに力をつけて見ごたえのあるレースをみせてくれるはずだ。
Text:渡邉 篤
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