RACE REPORT
レースレポート前日の2025年7月19日に開幕を迎えたJEGTだが、翌日の7月20日に早くもRd.2を迎えた。
公式戦以外ではグランツーリスモ7を使用する大会でほとんど見られない初の連戦開催という点にも注目したい。
レギュレーションや各チームに与える連戦の影響も気になるなか、昨年王者で3連覇中の#1 QT DIG∞が貫禄をみせつけて今季初勝利。
優勝の行方以外にも見どころの多かったRd.2の模様を、見どころやレギュレーションも含めて詳しく紹介しよう。
シリーズ化前の2019年のラウンドゼロも含めて、JEGTはかつて連戦で開催されたことはない。
初の連戦で迎えるRd.2は、開幕とは異なるレギュレーションが設定された。
Rd.2レギュレーションを、見どころも含めて紹介しよう。
連戦を見どころに挙げた理由は、前日おこなわれたRd.1の影響が全く予測できないためだ。
勝利した#9 ウエインズトヨタ神奈川が勢い的に有利にみえるが、追われる立場としてのプレッシャーもかかる。
一方で、思うように結果を残せなかったチームは焦る気持ちと同時に、すぐに取り返せる翌日開催に期するものはあるだろう。
さらに、前日も含めてオフラインレースという点も、レースの行方を予測不可能にする要素だ。
前日にRd.1を戦って1泊して翌日もレースというのは、普段自宅や慣れた場所から参加している選手たちにとっては環境の変化への対応も要求される。
例年のJEGTは、オフラインレースのRd.FINALを除いて基本的に同じフォーマットで開催されてきた。
しかし、開幕戦翌日におこなう今回のRd.2では、ハイパースプリント、決勝レースともに大きく内容が異なる。
使用コース | 富士スピードウェイ |
使用マシン | (予選)SF23(決勝)Gr.3から選択 |
周回数 | (予選)アタックラップ1周(決勝)23周 |
使用タイヤ | (予選)レーシングミディアム(決勝)レーシング ハード/ミディアム/ソフト ※使用義務:ハード/ソフト |
ナイトロ | (予選)使用可(決勝)使用不可 |
レース方式 | 各チームの代表によるマッチバトル形式(予選スーパーラップの順位によって対戦相手を決定) |
使用コース | 対戦ごとに抽選で決定 |
使用マシン | SF23 |
周回数 | 2周 |
使用タイヤ | レーシングソフト |
ナイトロ | 使用可能 |
予選スーパーラップから決勝レースまで、終始#1 QT DIG∞がチャンピオンチームらしい本来の実力を発揮した。
一方で、開幕戦で苦戦していた#52 KANTOモータースクール SCARZや、着実に力をつけてきた#127 eM福岡 エンタテ!区 LEGENDSも活躍。
開幕戦とは大きく順位の変わった、Rd.2のレースを詳しく振り返ってみよう。
最初に上位を狙えるタイムを記録したのは、加藤 陸選手(#4 EBBRO RACING TEAM)。
1分21秒299の好タイムで、他チームの結果を待つ。
予選最終盤の8番手でアタックしたのは、小高 侑己選手(#12 KOSHIDO RACING Ⅻ)。
1分21秒178を記録して、トップタイムの更新に成功した。
前人未到の4連覇を狙うためにもRd.2で確実に結果を残したい#1 QT DIG∞は、開幕戦同様に奥本 博志選手が予選スーパーラップに望んだ。
セクターベストを上回るペースでタイム更新に期待がかかるなか、1分21秒000という脅威のタイムを叩き出してトップに立った。
予選最後のアタックは、初陣を見事な優勝で飾った#9 ウエインズトヨタ神奈川。
瀬川 彰斗選手は、2連勝に向けて弾みをつけたいところ。
しかし、セクターベストに近いタイムで好走するも、わずかに届かず1分21秒268の3番手に終わった。
結果、奥本選手(#1 QT DIG∞)が王者の実力を見せつけて予選トップ。
#12 KOSHIDO RACING Ⅻの小高選手が、トップとわずか0.178秒差の2番手につけた。
第1レースは、奥本 博志選手(#1 QT DIG∞)と西谷 翔真選手(#127 eM福岡 エンタテ!区 LEGENDS)のマッチアップ。
前列からスタートした奥本選手が、終始相手を寄せ付けない安定した走りみせる。
結局ポジションが1度も入れ替わることなく、奥本選手が勝利した。
久万田 崚選手(#12 KOSHIDO RACING Ⅻ)と木村 歩夢選手(#523 日産サティオ佐賀)が登場した第2レースは、木村選手がまさかのスピン。
ゴールまでマシンを運んだ久万田選手が、労せずして5ptを獲得した。
第3レースは、鷲尾 拓未選手(#9 ウエインズトヨタ神奈川)と加藤 達彦選手(#54 MAZDA SPIRIT RACING with TC CORSE)の対決。
オープニングラップからお互い譲らず、激しいポジションの奪い合い。
再三トップが入れ替わったレースは、加藤選手が粘りきって逆転勝利を掴んだ。
中川 隼人選手(#4 EBBRO RACING TEAM)と稲葉 隼平選手(#105 SPK e-SPORT Racing with TC CORSE)による第4レースは、スタートでポジションを失った中川選手の冷静なドライビングが光った。
ファイナルラップのヘアピンで、イン側にうまくノーズをねじ込んで再逆転。
その後はポジションを守りきり、そのままチェッカーフラッグを受けた。
第5レースは、佐々木 拓眞選手(#52 KANTOモータースクール SCARZ)が辻村 亮介選手(#8 ARTA)激突。
開幕戦では両チーム不本意な成績に終わっただけに、ハイパースプリントで弾みをつけたい。
辻村選手はスタート直後から積極的に仕掛けていき、佐々木選手は防戦するという展開。
そしてついに、100R後のヘアピンでイン側から見事にオーバーテイクを決める。
しかし、続くダンロップコーナーでオーバーシュートした隙をついて佐々木選手が再度ポジションを奪い返すと、そのままフィニッシュ。
見ごたえのあるレースの結果は、佐々木選手に軍配があがった。
決勝レースでは、オフラインレースの醍醐味ともいえるドライバー交代がレギュレーションに盛り込まれた。
23周という長丁場で争われるセミ耐久レースだが、オープニングラップから各ポジションで激しい順位争いが繰り広げられる。
まずは、3番手スタートの森本 健太選手(#9 ウエインズトヨタ神奈川)が、長 和樹選手(#12 KOSHIDO RACING Ⅻ)をコカ・コーラコーナで捉えて2番手に浮上。
3周目にはトップを走る川上 奏選手(#1 QT DIG∞)を、ピットアウトレーンのエスケープゾーンを使ってイン側からノーズをねじ込んでトップに立った。
5番グリッドという中段からスタートした佐々木 拓眞選手(#52 KANTOモータースクール SCARZ)だったが、6周目には3番手まで順位をあげて追撃体制を整える。
中盤のレース展開は、序盤とは打って変わって落ち着いたレース。
トップを走行するミディアムタイヤスタートの川上選手が、安定した走行で後続との差を広げていく。
下位グリッドからスタートした3チームは、スタートでハードタイヤを選択。
中盤には見かけ上の上位を占め、終盤でのピット戦略にも注目が集まる。
レースが終盤に差し掛かる17周目、各チームがピット作業を終えた段階で川上選手からバトンを受け継いだ今村 駿佑選手(#1 QT DIG∞)がトップを快走。
一方の2番手争いは、熾烈を極めていた。
8番手スタートからワンピット戦略でポジションを上げてきた石水 優夢選手(#54 MAZDA SPIRIT RACING with TC CORSE)だったが、7周目からのロングランのためタイヤはかなり厳しい状態。
21周目の1コーナー飛び込みで3番手を走行していた岩田 和歩選手(#127 eM福岡 エンタテ!区 LEGENDS)にオーバーテイクを許すと、続く100R後のヘアピンで鍋谷 奏輝選手(#52 KANTOモータースクール SCARZ)にもポジションを奪われた。
鍋谷選手はさらにペースをあげ、翌周には岩田選手を追い詰める。
半周以上に渡るエキサイティングなバトルの末、ファイナルラップの1コーナー鍋谷選手が粘る岩田選手のオーバーテイクに成功した。
最終的には、完璧な作戦で危なげないレースをみせた#1 QT DIG∞がポールトゥウィン。
佐々木選手と鍋谷選手が見事に連携した#52 KANTOモータースクール SCARZが2位。
そして10番グリッドスタートから驚異的な追い上げをみせた#127 eM福岡 エンタテ!区 LEGENDSが、3位表彰台を獲得した。
開幕戦ではルーキーチームの後塵を拝すことになったディフェンディングチャンピオンの#1 QT DIG∞だが、Rd.2で圧巻の強さをみせた。
予選スーパーラップとハイパースプリントで異次元の速さをみせた奥本選手、安定感のある走りで作戦通りに決勝レースを運んだ川上選手と今村選手。
3連覇中というのも納得のまったく隙のない貫禄の走りをみせた。
一方で、Rd.2を終えてポイントランキング1位に立った#1 QT DIG∞だが、まったく安心できる状況とはいえない。
Rd.1、2を経て、実に多くのチームが勝てる可能性を示した。
デビュー戦を完全勝利で飾った#9 ウエインズトヨタ神奈川、2戦とも予選2番手を獲得した#12 KOSHIDO RACING Ⅻ、10番手スタートから3位表彰台にまで追い上げた#127 eM福岡 エンタテ!区 LEGENDS。
さらには、Rd.2の決勝レースまで調子の上がらなかった#52 KANTOモータースクール SCARZも、予選5番手から2位に入った。
その他のチームも随所に光るところをみせており、どこが勝ってもおかしくない様相だ。
2025年9月7日に予定されている次回Rd.3でどのチームが表彰台にあがるのか、今から楽しみにしたい。
Pos. | No. | Team | Machine | Total Point |
1 | 1 | QT DIG∞ | メルセデス AMG GT3 ’20 | 35pt |
2 | 52 | KANTOモータースクール SCARZ | メルセデス AMG GT3 ’20 | 23pt |
3 | 12 | KOSHIDO RACING Ⅻ | レクサス RC F GT3 ’17 | 18pt |
4 | 127 | eM福岡 エンタテ!区 LEGENDS | メルセデス AMG GT3 ’20 | 15pt |
5 | 8 | ARTA | ホンダ NSX Gr3 | 12pt |
6 | 54 | MAZDA SPIRIT RACING with TC CORSE | マツダ RX-VISION GT3 CONCEPT | 11pt |
7 | 105 | SPK e-SPORT Racing with TC CORSE | マツダ RX-VISION GT3 CONCEPT | 8pt |
8 | 4 | EBBRO RACING TEAM | マツダ RX-VISION GT3 CONCEPT | 6pt |
9 | 9 | ウエインズトヨタ神奈川 | レクサス RC F GT3 ’17 | 5pt |
10 | 523 | 日産サティオ佐賀 | 日産 GT-R ニスモ GT3 ’18 | 2pt |
Pos. | No. | Team | Rd.1 | Rd.2 | Rd.3 | Rd.4 | Rd.5 | Total |
1 | 1 | QT DIG∞ | 23 | 35 | 58pt | |||
2 | 9 | ウエインズトヨタ神奈川 | 35 | 5 | 40pt | |||
3 | 52 | KANTOモータースクール SCARZ | 14 | 23 | 37pt | |||
4 | 12 | KOSHIDO RACING Ⅻ | 15 | 18 | 33pt | |||
5 | 54 | MAZDA SPIRIT RACING with TC CORSE | 16 | 11 | 27pt | |||
6 | 8 | ARTA | 13 | 12 | 25pt | |||
7 | 127 | eM福岡 エンタテ!区 LEGENDS | 5 | 15 | 20pt | |||
8 | 105 | SPK e-SPORT Racing with TC CORSE | 12 | 8 | 20pt | |||
9 | 4 | EBBRO RACING TEAM | 7 | 6 | 13pt | |||
10 | 523 | 日産サティオ佐賀 | 2 | 2 | 4pt |
Text:渡邉 篤
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日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |
1 | 2 | 3 | 4 | |||
5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 |
12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 |
19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 |
26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 |
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