グランツーリスモ初心者のための世界の名門サーキットコーナー名紹介 〜スパ・フランコルシャン編〜

ベルギーの美しい森深く建設されたスパ・フランコルシャン

ベルギーにある全長7,004mにも及ぶコース長が特徴のスパ・フランコルシャン。
創設は1920年代からと歴史のあるコースで、F1も開催される名門のサーキットだ。
オー・ルージュと呼ばれる名物コーナーをはじめ、多くのコーナーに名称がつけられていて、多くのサーキットで使用される「ターン○」といった表現はほとんど使われない。

今回は、スパ・フランコルシャンの各コーナーの名称を、セクターごとにわけて一挙にご紹介しよう。

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セクター1：地形や地名由来の多いスパ・フランコルシャンのコーナー

スパ・フランコルシャンのコーナー名は、コーナーの形状ではなく地形や地名を由来とするものも多い。

スパ・フランコルシャン最大の名物コーナー、“オー・ルージュ”もコーナーのある場所にもともとあった名称が使われている。
序盤の勝負所も含まれるセクター1のコーナー名をみていこう。

ラ・ソース（La Source）

ラ・ソースの立ち上がりは続くオー・ルージュへの進入に影響する

スタート直後のヘアピンコーナーは、ラ・ソースと呼ばれている。
「水源」を意味するフランス語が由来。

しっかりとブレーキングをして進入し、無理のない脱出を目指そう。

オー・ルージュ（Eau Rouge）／ ラディオン（Raidillon）

厳密には1番低く谷になっている場所がオー・ルージュ

オー・ルージュの意味はフランス語で「赤い水」。
コーナーに差し掛かる谷底に流れていた小川の名前が、そのままコーナー名として使われている。

厳密には、もっとも低い位置の1つ目のコーナーがオー・ルージュで、続く複合コーナーはラディオンなのだが、丘を駆け上がるところまでをひとくくりにオー・ルージュとして呼称することも多い。

ケメル（Kemmel）

ケメルから続くストレートを合わせてケメル・ストレートと呼ぶ

ケメルは、本来ラディヨン後のゆるい右コーナーだけの名称だった。
しかし、続くストレートも含めて“ケメル・ストレート”と呼称されている。

ストレートエンドはブレーキング勝負によるオーバーテイクポイントとなっていて、序盤の勝負どころだ。

セクター2：セクターごとに名物の高速コーナーセクションが含まれているのも特徴

スパ・フランコルシャンの各セクターには、それぞれ名物の高速コーナーが含まれている。
セクター2の高速コーナーはプーオン。
心臓破りの上り坂のオー・ルージュとは逆に、くだりながらの高速コーナーなのでドライバーの度胸が試される。

レ・コーム（Les Combes）／ マルメディ（Malmedy）

レ・コームへの飛び込みは激しいブレーキング勝負が展開される

レ・コームの意味は谷。
ケメル・ストレートからのブレーキング勝負で、多くのオーバーテイクがみられるポイントだ。

マルメディはレ・コームを直進した先の村の名前が由来となっている。
レ・コームを立ち上がった速度をできるだ維持して、リズムよく駆け抜けたい。

ブリュッセル（Bruxelles）

ブリュッセルはくだりながらの旋回のため繊細なアクセルワークが求められる

かつては“リバージュ”（Rivage）と呼ばれていたが、現在はブリュッセルという名称に改められている。
くだりから右に180度回り込むコーナーなので、繊細なアクセルワークが必要。

プーオン（Pouhon）

プーオンはエスケープゾーンが広いのでクラッシュはしないがコースアウトは避けたい

プーオンは、オー・ルージュと並ぶスパ名物の高速コーナー。
くだりながらの高速コーナーということで、シビアな荷重移動による姿勢制御が求められる。

レ・ファーニュ（Les Fagnes）

レ・ファーニュはリズムよく駆け抜けたい

右、左と続くS字コーナーのレ・ファーニュへの進入速度は、プーオンの脱出速度の影響を大きく受ける。
先行車がいる場合は、プーオンの脱出を意識してレ・ファーニュでのオーバーテイクを狙ってみるのもいいだろう。

スタブロー（Stavelot）

スタブローは2連続コーナーの1つ目

スタブローは、スパ・フランコルシャンが公道サーキットとしてスタートした際に、コース上にあった街の名前が由来。
2連続右コーナーをまとめてスタブロと呼んでいたが、2008年に後半の名前が改称され、現在は最初の右コーナーだけの名称となっている。

セクター3：唯一のコース形状由来の名前のついたコーナーが最後の勝負所

セクター3の注目は、ブランシモンと呼ばれる左に旋回するほぼ全開で駆け抜ける高速コーナーだ。
ゆるやかなコーナーのため一見簡単に抜けられそうだが、ラインを外すと大きくアクセルを抜かなければ曲がれなくなる。

スパ・フランコルシャンのなかで、唯一“形状”から英語名を与えられたコーナーもあるセクター3の各コーナーをご紹介しよう。

ポール・フレール（Paul Frère）

ベルギーモータースポーツ界の英雄の名を冠したポール・フレール

ポール・フレールは、スタブローに続く2連続の右コーナーの2つ目。
もともとは、2連続コーナーを合わせてスタブローと呼んでいたが、2008年に亡くなったベルギー出身のレーサー、ポール・フレールの功績を称えて改称された。

ブランシモン（Branchimont）

ブランシモンは1カットでは捉えられないほど長い高速区間

ブランシモンは、鈴鹿サーキットの130Rのように“ほぼ”全開で駆け抜ける高速セクションだ。
F1マシンは完全な全開区間だが、GTマシンは一瞬アクセルオフをしてクルマの姿勢を変える必要がある。

ただし、限界近くまでアクセルを開け続けなければ最高速は出せないため、ドライバーの度胸が試されるコーナーだ。

バスストップシケイン（Bus Stop Chicane）

2007年にオーソドックスな形状に改修されたバスストップしケイン

もともとシケインの形状が“バス停”のような形状をしていたことが由来。
地名や地形を由来とするフランス語名がつけられるスパ・フランコルシャンのコーナーのなかで、唯一形状が由来でしかも英語名が付けられている。

しかし、実は2007年のコース改修で普通の右、左のシケインとなったことから、“バスストップ”の名称はなくなり現在は単なる“シケイン”という名称。

しかし、長年愛された呼称ということで、今でも多くの人からバスストップシケインと呼ばれている。

スパ・フランコルシャンは固有名詞が受け継がれる伝統あるサーキット

スパ・フランコルシャンのホームストレートはそれほど長くない

スパ・フランコルシャンのコーナーにつけられた名称には、もとの地形や町の名前など形状ではなく固有名詞が数多く使われている。
もともとが公道コースとしてデザインされ、自然の地形をいかす形で山中に建設されたサーキットだけあって地域へのリスペクトが色濃く現れているのだろう。

コーナー名を紐解いていくことで、伝統あるスパ・フランコルシャンの長い歴史を垣間見られた気がした。

Text： 渡邉　篤

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