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ニュースグランツーリスモ7のチューニングメニューには、エンジンのカスタマイズもラインナップされている。
一方で、エンジンチューニングは専門的な領域のため、マフラーやサスペンションといったパーツに比べると馴染みがないという方も少なくないだろう。
意味がわからなくてもチューニングさえすればパワーは上がるが、せっかくならチューニングメニューの内容を理解していたほうがより楽しめる。
グランツーリスモ7で利用できるエンジンチューニングメニューについて、実車での事例や効果も交えながら詳しく解説しよう。
エンジンチューニングの手始めは、パーツを入れ替えることだろう。
数値としてのパワーアップだけでなく、吹け上がりの向上も含めて体感しやすいはずだ。
グランツーリスモ7では、カムシャフトとクランクシャフト、ピストンがエンジンパーツとして用意されている。
シリンダー内に取り込んだ混合機の圧縮比を高めるパーツの1つが、ハイコンプピストンだ。
着火する前の気体をできるだけ圧縮したほうが、より大きな爆発力を得られてパワーが出る。
より小さく縮めたほうが大きな反発力を得られるバネをイメージすると、圧縮比を高める効果を理解しやすいだろう。
ただし、圧縮比を高めるチューニングはリスクも伴う。
高圧縮を支える各部にはより大きな負荷がかかり、燃焼温度も上昇する。
耐久性も加味して圧縮比を設定しないと、いくらパワーが出ても壊れやすいエンジンになってしまう。
コンロッド(コネクティングロッド)とピストンの材質をチタンにして、軽量化と高剛性化を図る。
高速で往復運動をするピストンとその運動を支えるコンロッドは、排出と圧縮の工程では重りにしかならない。
軽量化することで高回転時のロスを軽減し、結果としてエンジン出力を高められる。
また、回転数や圧縮比の上限を決める要素の1つは、ピストンとコンロッドの耐久性だ。
各部をチューニングしても、最終的な爆発力をピストンとコンロッドが受け止められなければ意味がない。
チタン製に変更することで、より効率の良いエンジンチューニングを目指せる。
ただし、実車のチューニングで、チタン製のコンロッドやピストンをプライベーターが用意するのは現実的ではないだろう。
チタンは材料そのものが高く、加工にも高度な技術が必要なためだ。
メニューから選ぶだけで簡単に装着できるというのは、グランツーリスモ7だからこその魅力だろう。
ハイリフトカムシャフトは、吸排気バルブの開閉量を増やすパーツだ。
カムシャフトはエンジンの回転力によって回転し、取り付けられたカムと呼ばれる卵型の部品でバルブ(もしくはロッカーアーム)を押して開閉する。
カムの出っ張り部分を大きくすれば、それだけ大きくバルブが開く。
バルブが大きく開くということは、吸気であればそれだけ多くの空気を吸い込めるし、排気であれば効率よく燃焼後のガスを排出できる。
エンジンは空気の爆発によってパワーを得るため、吸気量を増やせばそれだけパワーが向上するというわけだ。
また、グランツーリスモ7では細かな設定できないが、実車ではカムの形状によってバルブのタイミングや開閉時間のコントロールもできる。
エンジンパーツのなかでもカムシャフトは、パワーとフィーリングが大きく変わるチューニングだ。
クランクシャフトは上下運動をするピストンの力を受け止め、円運動に変換してトランスミッションに伝達するシャフトだ。
エンジンの強大なパワーを受け止める部品のため、エンジンのハイパワー化や高回転化を図る場合は純正以上の強度と精度必須。
また、クランクシャフト自体の重量を軽くすることで回転抵抗を抑えることができ、エンジンレスポンスの向上が狙える。
クランクシャフト単体で劇的なパワーアップをできるわけではないが、チューニングしたエンジン出力をパワートレインに伝達する重要な部品だ。
なお、実車では強化品が作られているとは限らないため、純正品を加工するケースもある。
エンジンのチューニングメニューは、パーツの組み込みだけでは終わらない。
エンジン各部を細かな作業によって最適化することで、組み込んだパーツの効果を最大化しつつ出力を向上させることが重要だ。
グランツーリスモ7で用意されている、エンジン本体のチューニングメニューをみていこう。
ポートとは、エンジンヘッドの吸気と排気の気体がとおるそれぞれの穴のことだ。
市販されているエンジンは、量産時のコストや燃費といったパワー以外の要素も加味して製造されている。
つまり、パワーのみを求めるのであれば、改善の余地があるということだ。
ポートを研磨して表面を滑らかにしつつ効率の高い形状に整えることで、さらなる吸排気効率の向上を図る。
ただし、もともと十分なポートの大きさは確保されているため、劇的なパワーアップを図るためのチューニングではない。
グランツーリスモ7であれば確実にパワーが上昇するが、実車での効果はレスポンスやフィーリングの向上が主目的といったところだろう。
エンジン各部の気筒ごとの重量差を極力なくすチューニングを、バランス取りという。
エンジンは1分間に数千回転以上も回るため、気筒ごとの重量差が大きいとバタついて十分な出力を得られない。
量産型エンジンでもある程度の精度では組み付けてあるものの、カタログスペックを実現できる範囲内の誤差までは許容されている。
高回転、高出力化を図るためには、より精度の高いバランス取りが不可欠だ。
ピストン、コンロッド、バルブといった各部の重量をコンマ以下の精度で揃えて組み付ける。
実車の量産車でバランス取りしてあるエンジンとして有名なのは、日産 GT-Rのエンジンだ。
「匠」と呼ばれる職人が各パーツを1つず計量し、同じ重量に揃えて手作業でエンジンを組み立てている。
シリンダーの内径(ボア)を広げて、排気量を増加するエンジンチューニングをボアアップという。
低回転域を中心にトルクが向上するため、加速力がアップする。
極端な例ではあるが、1,000cc前後の国産コンパクトカーと、8,000ccの大型アメリカ車をイメージしてもらえれば違いがわかりやすいだろう。
ただし、実車ではシリンダー径だけでなく、圧縮比やシリンダーヘッドの形状など各部の調整も必要だ。
また、シリンダーの内径を広げるということは、気筒間の間隔が狭まる。
設計が根本的に変わるケースもあるため、実車でのボアアップは慎重に判断したい。
実車でのエンジンチューニングは、多少車に詳しい人でも簡単には取り組めない。
専用の測定機器や専門的な知識が必要なため、費用も高くなりがちだ。
グランツーリスモ7なら、メニューから選ぶだけで簡単にエンジンをパワーアップできる。
一方で、簡単なだけに全メニューを一度に実施したくなるが、ぜひ1つずつ反映して性能やフィーリングの変化を確認してほしい。
エンジンチューニングの奥深さが、少しでも体験できるはずだ。
グランツーリスモ7でエンジンに興味をもったら、実車でのチューニングメニューを考えてみるのも楽しいだろう。
実際に施工しなくても、「ハイリフトカムとハイコンプピストンを入れよう」「どうせならポート研磨もしようかな?」といったことを考えるのもクルマの楽しみ方だ。
Text:渡邉 篤
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